アイディ。

 

坂本真綾さんの6年ほど前に出版されたエッセイ「アイディ。」が文庫本版として再び出版されたので買ってみた。



表紙のデザインから帯に至るまで隅々までこだわりを持って作られている感じ。
その上、本を開いてみるとハードカバーの本には結構付いてる、
文庫本にはたまに付いている紐タイプの栞があると思うんだけど、それがちょっと凝っている。
プレゼントの紐で使うような平たくてちょっと固めな上質な紐、色はマリンブルーと言ったらいいのか、
時がたっても味わい深い風化の仕方をしそうな落ち着いた蒼。

それに星海社のかわいい星マークと可愛い英字フォントで白く「S E I K A I S H A」と書かれている。


かなり可愛い。


いや正直ちょっとクセが付きやすいし、ページに挟みづらいんだけど、その扱いづらさを補って余りあるほどのかわゆさ。

文庫本ってハードカバーの本に比べたらコンビニビニール傘的、というかどこか使い捨て感のある装丁だったりするけれど、
この文庫本版「アイディ。」はいつまでも丁寧に大切に手元に置いておきたい
そんな気持ちにさせるような作り手の愛情あふれる装丁だった。

ていうか右上にちっこく添えてある「星海社文庫」っていうロゴからしてすでに反則レベルでかわいいよなぁ。
なんていうフォントなんだろう。



そして、中身、エッセイはまだ読み終わってないんだけれど

すごく丁寧に日本語を扱う方だなぁと思った。
決して難しい言葉は使わずに口語に近い平易な言葉を選んでいるんだけど
核心はしっかり捉えていて、リズミカルに、イージーリスニングのようにスッと心のなかに入り込んでいくような文章。
そして何より飾らずに自然体。

坂本真綾さんはラジオのパーソナリティをされていて、僕もよく番組を聴いている。
その中でリスナーからのメールを読んだりするんだけど、
いくら一人の人間、坂本真綾さんを好きで集まったリスナーさんたちといえど、人間十人十色

文章を書くのが上手な人、文章を書く中でどうしても余計な自我が出てしまってまとまりのない文章になってしまう人(僕のことです)、

いろいろな人がいる筈なのに、なぜか坂本真綾さんの声で、坂本真綾フィルターを通して文章が読み上げられると
洗練されていて、知性を感じさせるんだけど、どこまでも暖かくて柔らかい、そんな文章になる。



とても「うける~」(ただし目は笑っていない)が口癖の人が書いた文章とは思えない。




  「遠くまで来たけれど、いつか見た地平線で感じたように、すべてはつながっている。

    たとえ何があっても、いつでも灯台のように、帰る場所を照らしてくれる。

     寂しいと思う必要はない。

      自分が思うように、一歩一歩進むしかない。」




そして、今年2冊目のエッセイが発売された。

タイトルは「from everywhere」。

「アイディ。」から6年後。一歩一歩進んだ真綾さんが from everywhere から送るエッセイ。

楽しみ。

 

アイディ。 (星海社文庫)

アイディ。 (星海社文庫)